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モスガーデン(完全屋外型コケリウム)における試論

もともとこのトピックで記事を書くつもりはなかったのだが、とある業者の方と話をしてみたところ私の栽培方法はかなり型破り(というより、破滅的?)であることが発覚したため、経過観察も兼ねてブログに記録しておく。

ここ何年か、密閉容器などを使って様々なコケの栽培をおしゃれに楽しむ、いわば「コケリウム(苔テラリウム)」なるものが密かなブームを巻き起こしていた。

実際にコケリウムの専門店もあるくらいだし、その手法を学ぶ教室のようなものまで開催されているので、結構なニーズがあるのだろう。

Instagramでも何処かの湿地帯の風景を一つの瓶の中に凝縮したかのような作品が大量に流れてくる。あれは天才的だ。

 

しかし、素人ながらにふと疑問に感じたのだが、どうして揃いも揃って何らかしらの容器の内に閉じ込めて、室内で育てているのか?

あらかじめ明言しておくが、わたしはコケリウムを楽しんでいる人たちにケチをつけたいわけではない。

わたし自身が、なにかこう…セオリーに合致するだけのものが嫌いな性分なのだ。

まあ、バカな思いつきである。

「誰かしら(失敗してもいいから)屋外でやってみたっていいのではないか?」

一般に屋外で栽培することは難しいと言われる全てのコケを射程に含めて。

 

そもそも論になるが、コケは日本国内のあらゆるところに自生している。

疑似的な育成条件が管理された容器の中や室内にのみ成立するというわけではないと思う。

コケは見た目のわりに案外タフな植物である。

例えば、乾燥圧縮された資材用の水苔が再生したみたいな話を聞いたことがある。

他のコケにも同様の生命力を期待するのはいささか酷だと思うが、樹木類や草花にはあるまじき性質があるのではないかという直感がここで働いた。

少なくとも、わたしはドライフラワーに水を垂らして新芽が出てきたということは今までに一度も経験していない。

 

手始めに屋外でコケを栽培している先例はないかと思って、いろいろ検索してみた。

わたしの検索スキルが低いのかもしれない。

日本庭園の写真が出てきた。

あとは、「スナゴケは直射オーケー。スギゴケ、ハイゴケなどは明るい日陰で育ちます」みたいな解説記事。

率直な感想としては、めちゃくちゃつまらなかった。

というか、ある意味では当然の結果でもある。

高確率で枯れることが分かっているのに、わざわざ屋外での栽培を推奨するだなんてありえない。

他にヒットしたのは一部のマニアが書いた断片的な記事くらいだった。

まとまった方法論が書かれているわけではないし、そもそも栽培環境が全く違うので、これも没。

 

じゃあ、仕方ない。

わたしが試すしかないね。

 

コケの共通項を探る

まずは、コケの性質やコケにとって相応しい環境について適当に考えてみた。

  • 根の働きが弱いか、そもそも根が根らしく機能していない(=実質的には、葉と茎に当たる部分で生きている? 光合成による栄養補給の割合が大きい?)

 → コケは他の植物とは異なり、「仮根」を張る。文字通り、仮初の根であるから、根から吸収する栄養量は極めて乏しい。どちらかというと、岩石や構造物などに自らを固定するため生やしている節がある。ただし、仮根の張り具合によっては、それを起点に葉を再生するものもあるので軽視してはならない。(例えば、コウヤノマンネングサ。)

  • 直射日光を嫌う種類が多い

 → 光合成くらいしか栄養を吸収する手立てがないくせに、こういうところがある。なんなんだお前ら。

  • 高温多湿だと死ぬ

 → コケのみならずほとんどの植物が嫌う。

  • 極端な乾燥を嫌う

 → でもある程度の乾燥には耐えてもらわないと困る。

  • 関東平野の空っ風は特によくない(=うまく育たない)

 → コケにとっての大敵っぽい。

  • 滞留水を嫌う

 → ジメジメした環境を好むわりに、古びた水が停滞するのを嫌がる。

  • 栄養の取り方がショボいので、即効性のある肥料が効かない(=臨時の立て直しが効かない)

 → 意図的に肥料は与えない。栄養分の多いものをやると処理しきれないし、カビなどが生えて逆効果となる。一部では緩効性の微量栄養素が有効という噂もあったが、詳細は不明。

 

具体的にどうするのか

だんだん文字に起こすのがめんどくさくなってきた。

論より実践である。

しかし、コケの特徴をまとめている最中にディープシェードに当たるところが適地なんじゃないかと思えてきた。

シェードガーデンという手法は昨今広まりつつあるが、そこにコケを入れてやるのもなかなか風情がありそうだ。

そんなことも踏まえつつ、栽培環境、植栽配置、定期的なメンテナンスの様子などを写真入りで記録していく。

メンテナンスについては、特筆事項があればその都度別で更新するつもり。

実験的な試みだが、それなりに考え抜いて作り込んだ。

これが功を奏するか否かは少なくとも一年間見る必要があるし、より持続性を考慮するならもう2,3年は観察しなければならない。

納得のいく結果が得られるまで誰にも真似をしてほしくないため、詳細部分はあえて割愛する。

バカを見るのはなるべくわたし一人で留めておきたい。

 

  • 栽培環境

東京都二十三区内。

そこら辺の密集した住宅街のうちの一つ。

敷地が狭く、土の容積も限られているので、植物は上手く育たないことが多い。

また、日が当たる箇所と当たらない箇所の落差が激しい。(当たるだけマシだと思いたい。)

今回植える場所は後者。

夏場はアスファルトの照り返しが非常に強いので地温の上昇は激しい。

おそらくこの辺がコケにとっての正念場になると思われる。

方角としては東側にあたるが、隣に門柱があるせいで直射日光はほとんど入らない。

結論:一般的な植栽には向かない。

Before の様子はひどすぎて撮る気も起こらなかった。

なので、作業過程で撮影した一枚だけ。

(2021/04/25)

f:id:Prushka:20210702162130j:plain

うーん、ひどい。

 

  • 植栽配置

とにかく苗のポットが増えすぎたことが背景にあり、臨時で買ってきた麻袋にブチ込んだらそのままスッポリ収まりそうだったのでやってみた、というのが実情。

ただし、植える品種に関しては日照条件の観点から考えて選んだ。

麻袋の中の植物:コゴミ、ディセントラ 'ゴールドハート'、リグラリア 'ブラッドマリークロフォード'

リフォームしたときのレンガの余りが大量にあったので、それを周りに積んでいく感じで麻袋をコーティングした。

(2021/04/28)

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全体的に綺麗にまとまったと思う。(後からゴチャゴチャと追加されるが…。)

レンガの合間に各種コケや山野草をすき込んで、なんかそれっぽく見えるように。

モルタルなどを使用しているわけではないので、植物に根を張ってもらい砂の流出を防いでもらおうという思惑がある。

若干傾斜になっているため、上から水を灌ぐとレンガの間を滴るような構造に。

植物のラインナップは以下の通り。

 山野草:イシガキスミレ、ヒナソウアッツザクラ

 コケ:コツボゴケ、ハイゴケ、シッポゴケ、ミズゴケ、タマゴケ、ヒノキゴケ、クジャクゴケ、ヒメホウオウゴケ、コスギゴケ、コウヤノマンネングサ、ホソバオキナゴケ、カサゴ

この時は全体的にコケは緑を保っていたが、その後もちろん枯れたり白化したりした。

 

  • メンテナンスとその後

基本的には、一日一回水をやるだけ。

コケは乾燥するとクシャクシャになって萎むので、スプレーで全体的に水がいきわたるように散布する。

晴天が続く日は、打ち水をしてやったりバケツごと放水したり。

何かと手間がかかる。

放任主義の方には全くオススメできない。

で、その後の経過観察。

(2021/06/05)

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コゴミとリグラリアが茂る一方で、ディセントラは早々に休眠した。

カラーリーフプランツとして植え込んだのに…。

ただでさえ宿根草で冬は地上部がなくなるというのに、夏も葉を落として寝るって本当にやる気ないなお前。

わたし並みにニートだよ。

 06/05に追加した植物:フタリシズカ、クラマシノブ、アリシウム 'シルバーフォールズ'

この辺はスペースがあったのでまあ適当に。

下は同日に撮影したコケの様子。

ていうか、本題はこちら。

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リグラリアの葉を退かした上部の様子。

ミズゴケの白化が目立つが、新芽が生えている辺り植えられた環境を察したのか。

何よりもカサゴケが無事だったことに驚いた。

多少茶色くはなっているが、きちんと傘を立てている。

東京都内の密集した住宅地の中で栽培することはまず不可能だろうと言われていたが…。

コツボゴケ、ヒノキゴケ、タマゴケなど暑さや乾燥に弱いコケも生きているので、これはなかなか悪くない。

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傾斜部の様子。

イワガキスミレとヒナソウは花期を終え、葉だけを残すように。

タマゴケとヒノキゴケなどが見える。

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同じく傾斜部のコツボゴケ。

水を与えると独特の光沢を発する。

非常に美しい。

こいつも乾燥に弱いとは聞いていたが…。

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一度は逝ったかと思ったクジャクゴケ。

なんと新芽が生えてきた。

お前、やっていくのか…。ここで…。

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コスギゴケ。

これは比較的乾燥に強い。

個人的には、スナゴケの次点くらい。

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門柱の真横。

f:id:Prushka:20210702172020p:plain

下からズームするとこんな感じ。

ここはガンガンに風が当たるので、ホソバオキナゴケを植えて耐えてもらうことに。

きちんと耐えている。

えらい。

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麻袋と門灯の中間。

ハイゴケが茂っている。

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上部の先端にあたるところ。

連日の強風で毛先が茶色くなったものの、シノブゴケは新芽を出している。

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ヒメホウオウゴケ。

こいつは普通に大丈夫そう。

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オーナメントがぶっ刺さっている根本の部分。

ここは直射も風も通らないので、ミズゴケは青々と原型を留めている。

タマゴケとシッポゴケは一度枯れかけたが、また新芽が出始めている。

 

(2021/06/21)

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ついにカサゴケから新芽と子株が出てしまった。

これ、もうわたしの勝ちってことでよくない?

現時点(2021/07/02)で、植えたやつは全て生き残っている。

全て枯らす覚悟で植えたので完全に予想外だったが、嬉しいことである。

 

それと、時系列が前後するが(2021/06/13)に山野草と食虫植物を追加した。

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ホタルブクロ '紅小町'

 

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ツクシカラマツ(筑紫唐松)。

門柱の隣がいまいち花芽にかけていたので。

ディセントラは葉の一つでもいいから出せ。

 

それと見えない位置に、イカリソウ '紫小町'。

取ってつけたような感じで植えたので、これは写真に映していない。

食虫植物の方も写真を撮っていなかった。

ドロセラ 'ビナータ' と、ウトリキュラリア(サンダーソニー?だったか)。

いずれも存命です。

ジメジメしているとコバエが酷いので、じゃあこいつらに喰ってもらおうということで導入した次第。

細々と仕事をしているのか、以前に比べるとあまり見なくなった…のかな。

 

…と、まあガチャガチャ書いているが、正念場は真夏。

とにかく夏越しできるかどうかが鍵になってくる。

欲を言えば、もう少しコケを綺麗に緑化させたい。

まだ環境に適応している途中段階だと思うので、今出ている新芽が都合よく育ってくれることを祈るしかない。

あとは今後の状況を報告したりしなかったり。

それなりに自信を持って「これならイケる!」と判断できたときに、具体的な方法論を書くことにする。

 

ちなみに、本日の様子。(2021/07/02)

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そういや、シラサギカヤツリも植えたのだった。

梅雨は水やりの手間が省けて助かるね。

バラの世話ができないのは、それ以上に鬱陶しいことだけど…。

あ~疲れた。

なんだか思考停止して主題から外れそうなので、ひとまずこれで終わり。